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わが国の子どもの1型糖尿病の発症率は低く,結果として社会的認知が得られにくい状況にあります.そのため,1型糖尿病の子どものための解説書は非常に少なかったのですが,最近では日本糖尿病学会,日本小児内分泌学会,国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)などのコンセンサスガイドブック,外国の翻訳本,小児糖尿病専門医による解説書が出版されてきています.このようななか,青野繁雄先生による『1型糖尿病と歩こう―“この子”への療養指導』が出版されました.青野先生はご夫婦で大阪市立大学小児科の糖尿病部門の責任者として,長い間小児1型糖尿病の診療にあたられてきました.現在は寺田町こども診療所を開設され,多くの糖尿病患者さんの診療にあたっておられます.さらに,日本糖尿病学会,日本糖尿病協会小児糖尿病対策委員会,厚生労働省糖尿病研究班など数々の公的な仕事もされ,また近畿地方の糖尿病小児のサマーキャンプにもかかわってこられました.
青野先生が糖尿病児ならびにそのご家族の心の問題を核にして診療されている様子は,学会の発表などからも十分にうかがえます.1型糖尿病のように,慢性の病気をもった本人ならびにご家族の心理的な負担は計り知れないものがあります.あまりに厳格にしても,また放任にしても,療養上うまくいきません.これまでの小児1型糖尿病の解説書の多くは1型糖尿病とは何か,インスリン量の調整法,シックデイの対応など,日常の診療に必要なことの解説が中心でした.子ども本人ならびにご家族の心理的な面を含めた解説書は少なかったように思います.一方,先生の姿勢が十分に表された本書は,子ども本人ならびにご家族の心理的な面を含めた解説書です.冒頭の“はじめに”に書かれている言葉には,まさしく出版にあたってのこの点における青野先生の気持ちが表れています.
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