特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
遺伝子検査と染色体検査
遺伝子検査の分析前因子
宮地 勇人
1
1東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学
pp.596-598
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104857
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
遺伝子の塩基配列などを標的として検出する遺伝子関連検査の工程には,測定前プロセス(検査依頼,検体採取,保存,運搬,検体試料の前処理,核酸抽出),測定プロセス(増幅,検出),測定後プロセス(結果報告,解釈,利用)の3つのプロセスがある.確定診断や治療選択の指標となる重要な情報を提供する遺伝子関連検査の測定プロセスでは,多様な遺伝子解析技術が用いられているが,その測定精度は検体採取から検体試料の前処理までの測定前プロセスにおける作業要因に大きく影響される.このため,測定精度の確保には,測定プロセスとともに,測定前プロセスが適正に行われることが不可欠である.
使用検体は,その採取部位が多様である.ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)検査の検体には,末梢血,濾紙上に乾燥させた血液,骨髄,buffy coat,喀痰,唾液・口腔内洗浄液,肺胞洗浄液,髄液,尿,糞便,生検組織,培養細胞,固定・包埋している組織などさまざまである.これら検体の生物学的・物理的・化学的性状は多様で,しばしば増幅に影響をもつ因子が含まれる.検体採取とその後の管理,処理法は用手法で行われ,施設や作業担当者によって異なる処理がなされる.したがって,測定精度を確保するには,まず適正な検体を確保し,不適切な検体に由来する測定誤差を回避することが重要である.
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