今月の臨床 臨床遺伝学─診療に必要な最新情報
出生前遺伝子診断
山田 秀人
1,2
1北海道大学大学院医学研究科生殖発達医学講座産科生殖医学分野
2北海道大学病院臨床遺伝子診療部
pp.1137-1143
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101564
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はじめに
産婦人科医が自ら,出生前遺伝子診断をクライアントに初めて説明し,勧めるケースは少ない.他科(小児科,神経内科,皮膚科など)において発端者の遺伝子変異が同定されたのちに,他科主治医がその母親の次回妊娠時の出生前遺伝子診断を判断し,勧めていたケースがこれまでに多かった.遺伝子医療部門がなかった時代には,他科主治医と産婦人科のいわゆる出生前診断担当医とクライアントとの関係だけで,出生前遺伝子診断が散発的に実施されていたのであろう.出生前遺伝子診断には,多くの倫理的・社会的問題が包含されている.したがって,各種ガイドラインを遵守し,実施前に十分な遺伝カウンセリングを行うことは必須である.手続きが複雑になり時間がかかるであろうが,より慎重で客観的な判断の質を維持するために,遺伝子医療部門や倫理委員会が果たす役割は大きいと思う.歴史的背景と経緯から施設によっては30余年前から実施されている羊水染色体検査と,それに比較して新しい羊水や絨毛を用いた遺伝子検査を同列に扱えば焦点が不明確になるために,本稿では主に,出生前遺伝子検査にかかわる内容を中心に記載することにする.
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