特集 免疫組織・細胞化学検査
抗原の種類による応用例
7.増殖因子,癌遺伝子産物
矢澤 卓也
1
,
中村 靖司
2
,
菅間 博
1
,
小形 岳三郎
1
Takuya YAZAWA
1
,
Yasushi NAKAMURA
2
,
Hiroshi KAMMA
1
,
Takesaburo OGATA
1
1筑波大学医学専門学群基礎医学系病理学
2和歌山県立医科大学病理学第二教室
pp.117-121
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902686
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はじめに
近年の分子生物学的研究により,多くの腫瘍性・非腫瘍性疾患における,増殖因子・癌遺伝子産物の病因・病態学的,生理学的な役割が明らかになってきている.その知見は,人体材料を用いた病理形態学の領域にも影響を与え,多くの疾患でそれらの病理学的な意義づけに関して検討がなされつつある.しかしながら,癌遺伝子産物発現による癌の悪性度診断を除き,現時点では,増殖因子・癌遺伝子産物の発現状態をもとに,癌腫か否かの確定診断を行うにはまだまだ検討の余地が残されている.また,検索対象があくまでも遺伝子産物である蛋白などであり,加えて,病理形態学的診断の大多数はホルマリン固定パラフィン包埋標本であるため,増殖因子,癌遺伝子産物の発現の同定には技術的に多くの制限と問題点が山積している.このように,現状では増殖因子,癌遺伝子産物の検索および疾患におけるその発現の意義づけには,多様の問題点があるわけであるが,これらデータの担う,ヘマトキシリン-エオシン染色(hematoxylin-eosin staining;H・E染色)標本に基づく病理診断の補助診断としての役割は今後大きくなるものと考えられる.この項では,増殖因子,癌遺伝子産物(蛋白)についての概説を述べ,代表的なものについて実際の例を含め述べる.
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