救急神経症候の鑑別とマネジメント(7)
急性期脳梗塞のneuro-critical care(前編)
永山 正雄
1
1東海大学医学部神経内科
pp.1240-1248
発行日 2003年7月10日
Published Date 2003/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102140
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脳血管障害の別名として用いられる“脳卒中”は,元来は“脳の病気で突然に何かにあたったように倒れる”ことを意味する.近年,脳卒中はheart attackになぞらえてbrain attackとも呼ばれるが,わが国での死亡率は心筋梗塞の約2倍,発症数では3~5倍に達する.特に脳梗塞は単一臓器の死亡原因として最も多い.本稿では,その頻度と緊急性からcritical care neurologyの中心命題の一つである脳卒中,特に脳梗塞の診断の実際について,現時点での到達点を踏まえてレビューする.
脳卒中を疑うべき症候
まず始めに,脳卒中か否かを鑑別する.病歴上,突然の激しい頭痛や意識障害,特に急な構音障害,片麻痺,複視の存在は,強く脳卒中を疑わせ識別性も高い.急な感覚障害,めまい,運動失調,失語症や痴呆症のみの例もあり注意を要するが,意識障害(どこかぼんやりしているなど),構音障害,病的反射(特にBabinski反射,Chaddock反射)や髄膜刺激徴候の有無に注意し,頭部CT(1~2日後に再検)やMRI所見に注目する.また表1に脳卒中と間違われうる状態をまとめた.これらの例は脳卒中と同様に意識障害で搬送されることが多いが,片麻痺などの局所症候も,特に低血糖,高浸透圧性非ケトン性昏睡,硬膜下血腫,脳腫瘍,頭部外傷,ミトコンドリア脳筋症でみられうるので注意を要する.なお意識障害例の鑑別については,本連載第3~4回を参照されたい.
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