特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
蛋白
β2-マイクログロブリン,α1-マイクログロブリン
伊藤 喜久
1
1旭川医科大学臨床検査医学
pp.130-132
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101748
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
β2-マイクログロブリン(β2-m),α1-マイクログロブリン(α1-m)はそれぞれ分子量11,000,30,000の低分子蛋白である.前者はHLA class I抗原のL鎖として,免疫応答にかかわる.一方,後者は肝臓で産生され,免疫抑制,担送機能に関連するとされるが,詳細は不明である.両者は似て非なるもの,β2-mは血清をサンプルとして腫瘍炎症マーカー,腎機能(GFR)マーカー,尿をサンプルとして尿細管マーカーとしての意義がある.一方,α1-mは腎機能(GFR)マーカー,尿をサンプルとしてより信頼性の高い尿細管マーカーである.いずれも低分子蛋白であり,分泌されると極めて短時間に糸球体基底膜を通過し,そのほとんどが近位尿細管細胞で再吸収,異化され,尿中にはわずかしか排泄されない.
腎糸球体機能の変化あるいは障害が起こると,いわゆる“根詰まり”状態となり,その程度に応じてβ2-m,α1-m両者ともに血中濃度は上昇する.GFRでそれぞれ60l/日,70l/日が目安となる.β2-mではさらに悪性腫瘍,膠原病,ウイルス疾患(HLA class Iが関連)などでは,細胞の増殖,代謝活性の増加により産生量が腎での異化除去能を上回ると,血中濃度は上昇する.これに対してα1-mはβ2-mにみられるような増加はないが,IgAと1:1モル比で結合するため,IgA型の骨髄腫などでIgA-α1-m複合体の増加により総濃度を押し上げる.
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