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肝悪性腫瘍の約9割を占めるのが肝細胞癌である.肝細胞癌の超音波画像の典型例は,辺縁低エコー帯(halo),内部エコーの不均一化のmosaic,nodule in nodule,外側側方陰影(lateral shadow),後部エコーの増強(PEE:posterior echo enhancement)である(図1).超音波像の分類は切除標本の肉眼分類に基づくことが多く,原発性肝癌取扱い規約の肉眼分類1)に準じることが多い.組織学的な分類では,分化度を細胞・構造異型より高分化型,中分化型,低分化型,未分化型に分類し,後者になるほど腫瘍の悪性度が高くなる.肝細胞癌は,de novo発癌として悪性度の高い癌が発生することもあるが,多くは境界病変から早期の肝細胞癌,進行肝癌へと徐々に進行していく多段階発癌の形式を取るものが多いといわれている.また,装置の改良により,小結節性病変が指摘しやすくなった今日では,早期の肝細胞癌といわれる高分化型肝細胞癌と境界病変との鑑別が重要となる.これらの鑑別に超音波ガイド下の針生検により診断を行うことも多いが,明確な境界があるわけではないので,組織診断上も鑑別が困難なことが多い.そこで,肝細胞癌の場合は血流の変化と組織学的悪性度(分化度)が相関しているといわれており2),血流診断を合わせて行うことが重要である.従来カラードプラ検査で腫瘍の内部および周囲を取り囲む動脈血流を認める場合には肝細胞癌,腫瘍内部に門脈血流を認める場合には腺腫様過形成と診断できるため波形解析も合わせて行っていたが,最近では経静脈性超音波造影剤レボビスト®が臨床応用されるようになり,その有用性は高く評価されている.特にB-modeのtissue harmonic imagingを用いた場合,腫瘍内の不整血管,腫瘍濃染像が描出でき,動脈血流の経時的な観察も可能となり,中分化型以降の進行した癌の診断はより確実なものとなった3).また,造影剤はKupffer細胞や類洞に溜まることがわかってきており,造影後約5分以降の肝実質染影像ではKupfferイメージングを表し,欠損像として描出される高分化型肝細胞癌とその境界病変の鑑別に役立つようになった(図2).
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