連載 米国の知的障害者サービスと脱施設化に学ぶ—わが国の痴呆性高齢者対策への警鐘・1【新連載】
わが国の痴呆性高齢者問題と米国の知的障害者問題との接点(上)
武田 則昭
1
,
八巻 純
2
,
M. P. Janicki
3,4
,
T. Heller
2,4
,
末光 茂
1
,
江草 安彦
1
1川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
2イリノイ大学シカゴ校応用健康科学部人間発達障害学科
3ニューヨーク州オルバニー大学知的障害センター
4イリノイ大学RRTC-ADD
2University of Illinois at Chicago, College of Applied Health Sciences, Department of Disability and Human Development
3University at Albany, Center on Intellectual Disabilities
pp.772-776
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902839
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はじめに
わが国の保健医療と福祉分野は,縦割り行政等の弊害もあり,ある種希薄な関係にあったと言える1).このような中にあって,壮絶とも言える障害者,家族,関係者の努力により,これまでに醸成された障害者福祉は「国連・障害者の10年」を契機に一層の加速を見せ,「福祉関係八法の改正」,「障害者基本法」を経て,社会福祉のあり方全体を変革しようとする「社会福祉基礎構造改革」と連動した地方分権に伴い,新たな展開が図られている1〜3).その一方で,知的障害者に端を発したノーマライゼーションの理念は,障害者問題だけでなく,少子・超高齢社会を目前に高齢者医療保健福祉の基本に大きな影響を与え1),福祉,医療,保健は近年,急接近を迫られている感がある.
筆者らは米国の各種障害関連研究機関やその研究者の協力を得ながら,主として米国の知的障害者の歴史的背景,各種サービス,脱施設化について検討・研究している.またイリノイ州,ニューヨーク州などの各種関連センター,施設,シニアハウスなどの現場についても訪問調査し,検討を行っている.それらの一連の検討過程で,米国における知的障害者に関する諸状況,問題点,対策等の多くが,わが国の知的障害者に限らず,一般の痴呆性高齢者に関する諸問題,行政施策,社会活動,研究面で多くの関連性や共通点を有することに着目し,その方面からの研究を進めている.
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