連載 米国の知的障害者サービスと脱施設化に学ぶ わが国の痴呆性高齢者対策への警鐘・10【最終回】
わが国の痴呆性高齢者問題への解決点の模索(下)
武田 則昭
1
,
八巻 純
2
,
M. P. Janicki
3,4
,
T. Heller
2,3
,
末光 茂
1
,
江草 安彦
1
1川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科
2University of Illinois at Chicago, College of Applied Health Sciences, Department of Disability and Human Development
3University of Illinois at Chicago RRTC-ADD
4University at Albany, Center on Intellectual Disabilities
pp.556-560
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100916
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(前号より続く)
2. 脱施設化
米国での脱施設化は20世紀半ばに始まり,州ごとに独自に取り組まれ,進捗状況も異なるが,ピーク時に20万人にいた入所者は30年後(1998年)には5万人になり,現在も進行中である.
ニューハンプシャー州は州最大のラコニア州立収容施設の閉鎖と進歩的な法案が成立し,長い民事裁判で,1991年に17年かけて完全な脱施設化を実現している.
ラコニア施設では,職員に対し「価値」訓練やノーマライゼーションに関連した教育を繰り返している.家族援助,雇用援助,早期介入,公教育のような家族援助プログラムが存在し,知的障害者がラコニア施設内での居住を求める必要性はもうなくなっている1~5).また,ラコニア施設にいた知的障害者のひどい自虐行為,奇怪な動作などは,以前の施設での居住により負わされた依存性や傷跡の結果であることを,多くの人が理解するようになっている.「施設は彼らの障害のために作られたものではなく,むしろ,われわれが障害者のもつ真の能力を認め,社会に包含することができないために作られた」との考えに基づき,現在行われている後戻りの予防を公開下に監察することにつながっている2,3).
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