講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・12
ティーンの危機を支える
上林 靖子
1
Yasuko KANBAYASHI
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所
pp.863-865
発行日 1993年12月15日
Published Date 1993/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900935
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もう10年以上の昔のことである1977年10月,高校生の一人息子を父親が絞殺するという事件があった.息子の家庭内暴力が手に負えなくなった父親が,思いあまっての凶行であった.有名高校の生徒,肉親による殺害というこの事件は,世の注目を浴びた.これについては本多勝一著『子どもたちの復讐』に詳しい.この青年はいくつかの精神科で治療を受けていた.にもかかわらず,こうした結末に至ったということは,思春期の子どもの問題に関わる私たちにとって衝撃的であった.最近では浦和市で起きた高校教師による長男殺害は記憶に新しい.このような事件が繰り返されるにつけ,わが国の思春期精神保健の未熟さを改めて感じさせられる.
“10代のこころを診る”というこのシリーズでは,今日わが国で問題となっている青年期に特徴的な問題を中心に取り上げてきた.反社会的行動(暴走族,家出等),恋愛・進路・学業をめぐる挫折と悩み,あるいは家族の崩壊に直面しての苦悩などについて,紙数の制限もありふれられなかったが,重要な問題である.ティーンのこころにかかわる問題は実に多様である.最後にこの稿では,こうした危機にあるティーンへの援助についてふれることにしたい.
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