特集 学齢期の子供と現代社会
登校拒否—子供のライフストレスと学校教育を中心に
上林 靖子
1
,
斎藤 万比古
2
,
森岡 由起子
3
,
中田 洋二郎
1
,
藤井 和子
1
,
北 道子
1
,
佐藤 至子
2
,
梶原 有二
4
,
生地 新
3
Yasuko KANBAYASHI
1
,
Kazuhiko SAITO
2
,
Yukiko MORIOKA
3
1国立精神・神経センター精神保健研究所
2国立精神・神経センター国府台病院
3山形大学医学部精神医学教室
4埼玉県立小児医療センター
pp.301-306
発行日 1991年5月15日
Published Date 1991/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900335
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■登校拒否とは
学校を休むということが,明らかな病気ではないことは自明のことである.通常子供が学校を欠席する第1の理由は病気である.教育がそれほど重要視されていない社会では,子供は登校することより,家事や労働の一翼を担い役立つことが尊重されるので,時にはそれが第1の理由になることがある.学校教育に伴う経済的負担をまかなえない場合もあるであろう.これらのために長期にわたり欠席する子供たちがいることは,義務教育が制度化されたのち重要な問題となってきた.ところが,このような登校の障壁となる条件がないにもかかわらず,長期に欠席する子供たちが少なからず存在している.これらのうち,親に無断あるいは同意・承認を得ないままに欠席するものがいわゆる「怠学」であり,教育上は生徒指導の重要な課題となっている.
登校拒否は,Broadwin2)が怠学の特殊型として記載したことに始まる概念である.彼は怠学とは異なり母親が十分に承知している欠席の2例を報告し,その機制として母親との間の未解決の葛藤の存在を指摘した.その後,1940年代には欧米で臨床研究が重ねられ,学校恐怖症としてその特徴が次のように記載された.
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