現代の環境問題・15
食品汚染—マイコトキシン
上野 芳夫
1
,
川村 理
1
Yoshio UENO
1
,
Osamu KAWAMURA
1
1東京理科大学薬学部毒性学・微生物化学教室
pp.422-426
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900365
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●はじめに
真菌の第二次代謝産物で食品などを介して人畜に有害作用を示す化合物を,マイコトキシン(かび毒)といい,細菌毒や藻類毒と区分している.第二次大戦終了後アジア地区などから輸入した米が,黄色色素を生成するかびで汚染されていた,いわゆる黄変米事件に端を発し,汚染Penicillium属菌より肝発癌性ルテオスカイリン,腎毒性チトリニン,神経毒チトレオビリジンなどのマイコトキシンが同定された.また,日本各地で発生した赤かび中毒については,有毒Fusarium graminearumよりニバレノール(NIV)やデオキシニバレノール(DON)などのトリコテセン系マイコトキシンが同定され,ソ連での食中毒性無白血球症(ATA)もF. sporotrichioides由来の同じトリコテセン系T-2トキシンによる疑いが高い.
一方,イギリスで発生したTurkey-X病に端を発してAspergillus flavus由来のアフラトキシンB1(AFB1)が同定され,その強力な肝発癌性と食品汚染から注目されているマイコトキシンである.
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