特集 かびと健康障害
マイコトキシンによる健康障害
大坪 浩一郎
1
Koh-ichiro OHTSUBO
1
1東京都老人総合研究所臨床病理部
pp.477-484
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206114
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■マイコトキシンとは
糸状菌(かび)が産生する二次代謝物中,ヒトや家畜などに有害作用を示すものをマイコトキシン,かび毒と呼んでいる.これによって起こる食中毒(あるいは食餌性疾患;foodborne disease)を真菌中毒症(mycotoxicosis)と呼ぶ.真菌による食中毒としては古くからキノコによる中毒,麦角菌による中毒(ergotism)が知られていたが,二次代謝産物であるマイコトキシンによる中毒症の認識は比較的新しい.第二次大戦後,東南アジア,エジプト,スペインなどから輸入された米から,強い肝臓障害を起こすかび毒を作るPenicillium islandicumが分離された"黄変米事件"を,まだ記憶している人も多いであろう1)2).
マイコトキシンが世界的に注目を浴びるようになったのは,1960年代初めのaflatoxinの発見以後である.しかし,この極めて強い発癌物質をはじめ,マイコトキシンがヒトの健康障害,発癌に関連があるに違いないと考えられてきたのは,せいぜいここ10年くらいのことである3)〜6)13).
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.