特集 かびと健康障害
かび毒の食品汚染とその対策
一戸 正勝
1
Masakatsu ICHINOHE
1
1国立衛生試験所衛生微生物部
pp.492-498
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206116
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■はじめに
今日,かび毒——マイコトキシン——として報告されている真菌類の生産する有毒代謝物を数え上げると,300余種を超える膨大なものになるという.これら個々のかび毒がクローズアップされてきた背景には,さまざまな要因が挙げられる.まず,ヒトもしくは家畜,家禽などの中毒事例に端を発して,中毒原因物質の追求の結果として見出されたものが中心をなすのは,当然のことであろう.歴史的にはいわゆるかび毒が問題とされる以前にも抗生物質としてかび代謝物が知られていながら,毒性の面で実用に至らなかったものもかなり含まれている.また,わが国の黄変米事件やアフラトキシン中毒を契機として,食品,家畜飼料などから分離したかび類が実験動物に対し毒性を示したことから,かび毒として認識されるに至ったものまで,さまざまな経路を経て,かび毒の仲間が構成されている.
本稿では,単に毒性の面だけで評価するのではなく,実際のヒトの生活に直接,間接にかかわりあいを持つものとして,食品類の中に自然汚染の形で検出されるかび毒群——アフラトキシン,オクラトキシン,ステリグマトシスチン,パツリンおよび二,三のFusarium毒素類に限定して論を進めたい.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.