連載 日本の災害と公衆衛生——過去・現在・未来・8
首都直下地震
奥田 博子
1
1厚生労働省 国立保健医療科学院 健康危機管理研究部
pp.591-597
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210074
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はじめに
日本は環太平洋の地殻変動帯に位置し、世界の0.25%というわずかな国土面積に対し、全世界のマグニチュード6以上の地震の18.5%が発生している1)。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、大規模な地震に加え、津波、原子力発電所の施設事故という複合災害となり、東北沿岸部地域を中心に、多数の死者・行方不明者が生じた未曽有の災害も経験している。
さらに近い将来、その発生の切迫性が危惧される大地震の一つに首都直下地震があり、今後30年以内の発生確率は70%と高い。この地震による被害が集中する東京都は、わが国の政治・行政・経済に関わる中枢機関や大企業が集中し、人口密度も極めて高い国際都市である。このような高い集積性から、本災害がもたらす経済損失額は約95兆円2)と推計され、国難級の災害と呼ばれるゆえんである。
くしくも本年は、大正関東地震(1923〔大正12〕年)の発生から100年の節目の年に当たる。本稿では、過去の関東地震の教訓と、切迫性が指摘される首都直下地震の最新の想定や対策について公衆衛生の観点から検討する。
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