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はじめに
2008年度より,「厚生労働省における医療の効率的な提供の推進に関する施策」のなかで,地域内での各医療機関の役割の明瞭化,連携の強化に関する新たな医療計画が開始され,その方策の一つとして活用されたのが,地域医療連携パス(以下,脳卒中地域医療連携パス)である.
脳卒中患者の場合,発症後,急性期病院から直接自宅に退院できる場合とリハビリテーションや介護の必要性から長期入院,または施設での療養を継続する場合など,病状の程度によりさまざまな経過をたどる.また,退院後も,病院や介護サービスによるリハビリテーションの継続と基礎疾患の治療および再発予防のための通院(訪問診療)を要する.そのため,複数の医療・介護福祉機関が関わりあうこととなり,発症から入院,退院後の生活までの医療の流れや医療機能に着目した医療連携体制を明示することが求められる.以上より,脳卒中地域連携パスは,地域完結型医療の実現に向けたすべての医療機関で共有できる診療情報としての役割を担うことになる.その他,診療の標準化,インフォームドコンセントの充実,業務改善,コスト削減,在院期間短縮,チーム医療向上,発症~維持期に至るまでのデータ集積などの効果についても期待できる可能性がある.
2010年9月1日現在の東京都内で活用されている脳卒中地域医療連携パスは10個(表)(東京都脳卒中医療連携協議会事務局として把握しているもの)あり,急性期登録で110施設,回復期登録で158施設,維持期登録で576施設(1つの医療機関で複数のパスを活用しているケースも含む)である.脳卒中地域医療連携パス10個のうち,東京23区で活用されているパスは5個(東京都脳卒中医療連携協議会事務局として把握している数)である.脳卒中地域医療連携パス10個は,一見多いように感じるが,東京都には他の地域と大幅に異なる事情があり,システムそのものを比較対照することは無意味であると日頃から感じている.東京23区において現行の制度のもとでは決して,脳卒中パスがうまく稼働するとは思えないためである.しかしながら,平成21年度に東京都脳卒中医療連携協議会のなかに「地域連携パス部会」が設置され,地域連携パスの活用なども含めた,切れ目のない脳卒中地域医療連携を推進するうえで必要な事項が検討されることになった.つまり,パスの標準化に向けた取組方法,地域連携パス合同会議の運営,地域連携パスを活用した切れ目のない地域医療連携の推進などの検討である.その後,協議が重ねられ,2011年1月15日の脳卒中地域連携パスの合同会議において,東京都23区内の統一パス(案)を提示することになった.地域連携パス部会の審議を経て,2011年3月3日に東京都脳卒中医療連携協議会で最終検討がなされる予定である.
本稿では,他の地域と異なる東京都の事情と2008年度からの地域連携クリニカルパスの開始に伴う動向,23区内の共通パス(案)の紹介ならびにこの連携パスを十二分に稼働するための問題点を挙げる.
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