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2021年9月26日、第29回さんぽ会夏季セミナー2021をオンラインで開催しました。多職種産業保健スタッフの研究会であるさんぽ会(http://sanpokai.umin.jp/)の活動の中で、夏季セミナーは年に一度、月例会では時間的に扱えないテーマをじっくりと議論するのが目的です。日本の企業の99.7%以上は中小企業であり、その産業保健もさまざまな課題を抱えています。さんぽ会は普段は大企業からの参加が多いため、あえて中小企業にフォーカスして学びを深めることにしました。基調講演は、労働衛生機関として多くの中小企業の産業保健を担当するだけでなく、国際産業衛生学会(international commission on occupational health: ICOH)などで国際的な動向にも明るい森口次郎氏(一般財団法人京都工場保健会)にお願いし、続くリレー講演を藤田善三氏(東京商工会議所)と高野美代恵氏(オフィスME社会保険労務士事務所)に、午後の部は今郷はるか氏(国民健康保険組合・建築系)と瀧川育子氏(全国設計事務所健康保険組合)から実際の中小企業の健康経営支援や保健指導などでの困りごとを提示していただき、講師やフロアからアドバイスをいただく座談会形式で行いました。
森口氏からは「中小企業の産業保健」と題して、人・金・時間のない中小企業の産業保健の特徴と地域産業保健センターなどの嘱託産業医だけで担いきれない現状に対し、保健師や経営者も含む多職種連携の必要性や、問題探しではなく改善への取り組みに焦点を当てる活動(参加型の職場ドックなど)の重要性について紹介がありました。また経営者や従業員との信頼関係には、丁寧な仕事はもちろんのこと、衛生委員会での積極的な情報提供や巡視時の産業医の腕章での認知度向上の工夫など、「種を播きつつ風を待つ」姿勢が大事とお話しされました。また全労働者に産業保健サービスが提供されているオランダの事例や、ICOHの科学分科会(small-scale enterprises and the informal sector)やUSE(understanding small enterprises)などの国際学会で議論されている内容も解説され、中小企業の産業保健活動について、さらなる取り組みの活性化、関係団体の連携強化が期待されるとお話しいただきました。
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