新・視点
コロナ禍での公衆衛生—“Go to the People”ができない時に
河津 里沙
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1公益財団法人結核予防会結核研究所入国前結核スクリーニング精度管理センター
pp.76-77
発行日 2022年1月15日
Published Date 2022/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209773
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はじめに:公衆衛生と“Go to the people”
Go to the people——これは近現代中国の郷村建設運動の指導者、晏陽初(あんようしょ)による運動のモットーである。それが記されている詩の一節を紹介したい。
Go to the people(人々の中へ行き、)
live among them(人々と共に住み、)
love them(人々を愛し、)
learn from them(人々から学びなさい、)
start with what they know(人々が知っていることから始め、)
build on what they have.(人々が持っているものの上に築くのだ。)1)
公衆衛生とは、一般的には「地域社会の人々の健康の保持や増進をはかり、疾病を予防すること」と考えられているであろうか。しかし、筆者から言わせれば、公衆衛生とは「(自分一人の健康に気を付けていればよいものを)赤の他人の生活に首を突っ込もうとする、究極のお節介行動にすぎない」のだ。例えば適度な運動、バランスの取れた食事や禁煙なんぞは、人々にとっては最も優先度が低いことかもしれない。それでもあなたはその人々に健康で豊かな人生を送ってほしい、という信念のもと、公衆衛生活動に従事しているのではないだろうか。だからこそ、公衆衛生においても“Go to the People”が必要といえる。人々が何を大切と思い生活しているか、それを人々の中に分け入って肌で感じ取り、理解し、受け入れて、初めて彼らと「彼らにとっての健康とは何か」について対話ができるのだ。
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