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睡眠時間が短いことが心血管疾患、肥満、糖尿病、高血圧症などの危険因子となることが、2000年ごろから世界的に報告されるようになりました。また、不眠症は、うつ病の症状としてだけではなく、うつ病そのものの発症リスクを高めることが複数の疫学研究によって示されています。加えて、睡眠呼吸障害が産業・交通事故と深く関わっていることもよく知られるようになりました。睡眠にまつわる諸問題は、いまや先進国社会において重要な公衆衛生課題として認識されているのです。とりわけわが国においては、国民の平均睡眠時間が諸外国に比べて短く、日本人の睡眠時間が長期的には短縮傾向にあることが知られています。厚生労働省も、2014年には「健康づくりのための睡眠指針2014」を策定しました。現在進行中の健康日本21(第二次)でも、「睡眠による休養を十分とれていない者の割合の減少」を目標の一つに掲げています。
さて、「健康づくりのための睡眠指針2014」公表から7年が経過し、それまでの間に、ストレスチェック制度の開始、働き方改革の推進、そして昨今の新型コロナウイルス感染症の流行に伴うテレワークの普及など、労働者の睡眠を取り巻く社会状況には大きな変化が生じています。そこで本特集では、最近の睡眠にまつわる諸問題を産業保健の視点から整理するとともに、労働者の睡眠の確保に資することを目指して企画いたしました。睡眠問題と直結するものとして、「メンタルヘルス不調」、「睡眠呼吸障害」、「交代制勤務」、「ソーシャル・ジェットラグ」などのテーマを設け、識者からその基本と最近の知見を解説しています。加えて、読者の皆さまが実践できるような、労働者の睡眠保健指導に役立つ情報として、「生活環境と睡眠」や「職域での睡眠保健指導」の現状なども併せて紹介しています。本特集が日々の公衆衛生活動の一助となりましたら幸いです。
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