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新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)は世界中の人々の生活や働き方、規範や行動を大きく変化させました。発生から2年余りが過ぎ、現在はある程度落ち着きを見せていますが、当初、新聞、テレビ、インターネットは毎日COVID-19の話題でもちきりとなり、SNSでは専門家の意見やマスメディアの報道だけでなく、罹患者の生の声や恐怖を感じる市民の叫びであふれていました。これほど長期にわたり、国民の関心がただ一つの健康トピックに集中したことは現代では初めてのことだったのではないでしょうか。デマの拡散や、情報過多によるコロナ疲れ、長期化する自粛や度重なる緊急事態宣言で、人の行動変容の難しさも指摘されました。もともと感染症予防は、健康教育やヘルスプロモーションの重要なターゲットであり、近年では新型インフルエンザの経験もありましたが、今回のCOVID-19の対応は、その規模、スピード感ともに異次元のレベルであり、国や行政、医療現場は難しいリスクコミュニケーションが求められました。
地域、職域、学校、国際など健康教育やヘルスプロモーションのそれぞれのフィールドにも大きな変化が起きました。集団や個人に対する対面を中心とした平時の手法や介入は困難となり、外出自粛やフィジカルディスタンスの要請によりICTを活用した非対面の健康教育やヘルスプロモーションが一気に進みました。感染対策の最前線となった保健所、経済活動と感染予防の両立を強いられた企業、急激なオンライン授業への転換を余儀なくされた学校、貧困レベルや健康格差拡大が危惧された国際保健の現場など、エビデンスやガイドラインなどが不足する中、それぞれの現場では走りながら感染対策とヘルスプロモーションの両面の工夫を続けてきたといえます。オンラインでの授業や健康教育、テレワークの推進によるオフィス環境の変化、在宅勤務中の作業環境管理や作業管理、アプリによる遠隔の体調管理や専門家による面談、人々の新しいヘルスコミュニケーションの活性化など、ウィズコロナが定着しつつある今こそ、新しい健康教育やヘルスプロモーションの可能性について考える機会ではないでしょうか。
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