特集 栄養と健康—糖質制限食を中心に
「糖尿病診療ガイドライン」におけるエネルギー摂取量の設定基準
宇都宮 一典
1
1東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター
pp.886-891
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209285
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はじめに
生活習慣への介入は,2型糖尿病における治療の基本となるものである.2型糖尿病の食事療法の意義は,全身における良好な代謝状態を維持することによって合併症を予防し,かつ進展を抑制することにある.そのために,総エネルギー摂取量の適正化を通して肥満を解消するとともに,インスリン分泌不全を補完し,インスリン作用からみた需要と供給のバランスを取ることによって,高血糖のみならず糖尿病の種々の病態を是正することを目的としている.インスリンの作用は糖代謝のみならず,脂質および蛋白質代謝など多岐に及んでおり,これらは相互に密接な連関を持つ.このことから,食事療法を実践するに当たっては,個々の病態に合わせて,高血糖のみならず,あらゆる側面からその妥当性が検証されなければならない.
しかし,糖尿病の病態,ならびにその背景をなす食習慣が多様化した現在,一定の管理目標を掲げた画一的な栄養指導には実効性を期待できない.一方,慢性疾患と栄養に対する社会的関心が高まったため,諸学会が食事療法に関するガイドラインを発表したが,関心領域の違いから不統一感があるのは否めない.最も重要な問題は,総エネルギー摂取量の設定法である.あらゆる慢性疾患における食事療法の基本となるからである.
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