特集 公衆衛生活動と疫学
低まん延下での結核の疫学調査—社会ネットワーク分析の応用
森 亨
1
1公益財団法人結核予防会結核研究所
pp.919-925
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209032
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はじめに
今,ここに1人の結核患者と,その接触者のペアが2組ある.これらのペアの結びつき(接触関係)を考える時,新たな「社会ネットワーク」が想定され,複合的なネットワーク点検の対象となる.さらにこれら2つのグループが共有する場所(例えばMel's Bar)で結ぶと…(図1)1)2).
上記が,筆者と,結核に関する社会ネットワーク分析(social network analysis:SNA)との出会いである.かつて,性感染症患者の発生に関して「VDジーメン」(VD G-men.VD=venerial disease,性病.G-men=government men,連邦捜査員.米国の俗語.)が接触者を追跡する米国の話を聞いていたが,慢性疾患の結核にも似たような「追跡」の手法が適用され,しかも単なる「追跡」を超えた科学の体系がありそうな点に惹かれた.筆者はこれを機に「これからの接触者調査はSNAとDNA(deoxyribonucleic acid)だ」と喝破し(?),この語呂合わせに大いに満足した.
その後,自分なりに参考書や文献を読んでいるうちに,医学分野でのこの領域への世界の関心や,その手法の応用例がますます高まっていることを知った(図2).ならばと,何度か周囲の仲間に,この領域について「注意喚起」の声をかけている.
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