特集 公衆衛生活動と疫学
日本におけるField Epidemiology Training Program Japan(FETPj)の活動
福住 宗久
1
,
松井 珠乃
1
,
大石 和徳
2
1国立感染症研究所感染症疫学センター第1室
2国立感染症研究所感染症疫学センター
pp.912-918
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209030
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はじめに
1850年代に英国・ロンドンにおいてコレラが流行した際,ジョン・スノウ(John Snow)が,コレラで死亡した患者の居住地を地図上にプロットすることで,患者が特定の井戸の周囲に集中していたことを発見した.この発見がコレラ流行を終息させるための公衆衛生対策に結び付いたことはよく知られた事実である.
時を経て,感染症に対する予防策,検査方法,治療は著しく発展した.しかし,近年も世界的には,重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)や新型インフルエンザ,西アフリカでのエボラ出血熱,南米をはじめとしたジカウイルス感染症の流行,中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome:MERS)の出現が報告されている.日本国内でも複数の大規模食中毒事例や薬剤耐性菌による院内感染,約70年ぶりのデング熱国内感染例の報告がある.2015年に日本から排除認定された麻疹も輸入例を発端にして,さまざまな場所で集団感染を起こしている.
上記のように,依然として感染症の流行(集団発生)は世界各地,国内でたびたび起こっており,大きな健康危機問題である.現代の感染症集団発生事例に対応するための実地疫学専門家を養成するための世界標準プログラムが「Field Epidemiology Training Program」(FETP)である1).
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