特集 脳性麻痺と産科医療補償制度
脳性麻痺の疫学
豊川 智之
1
1東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学
pp.510-516
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208923
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脳性麻痺の基準
わが国における脳性麻痺の基準は,1968年の厚生省(当時)脳性麻痺研究班会議によって,「受胎から新生児(生後4週間以内)までの間に生じた,脳の非進行性病変に基づく,永続的な,しかし変化しうる運動および姿勢の異常である.その症状は満2歳までに発現する.進行性疾患や一過性運動障害,または将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する」と定められている1).ポリオ感染に起因する急性灰白髄炎の1960年代からの激減に伴って,代わって,脳性麻痺が小児の運動障害を引き起こす主原因となった.診断機器の発達などはあったが,上記の基準に大きな変更はなかった.脳性麻痺は,日常生活動作に問題がない軽度のものから重度までが含まれる包括的な疾患群であり,知的障害,構音障害,てんかん,認知障害などの合併・随伴障害がみられる2)3).
脳性麻痺の型はその運動障害の現れ方によって分類される3)4).筋肉の緊張が強い「痙直型」と,本人の意思とは関係なく体が動く「アテトーゼ型」(不随意運動型)が多い.他に,筋肉の緊張が低い状態と正常な状態が入れ替わりバランスがうまくとれない「失調型」,運動性がとれない「弛緩型」,関節の動きが硬い「強剛型」,これらの型が複合している「混合型」などがある.部位によっても分類されており,片側半身にだけ麻痺がみられる「片麻痺」,左右の下肢に麻痺がみられる「対麻痺」,左右の上肢と左右の下肢に麻痺がみられる「四肢麻痺」がある.左右の上肢と左右の下肢に麻痺がみられ,下肢の麻痺が重度の場合には「両麻痺」,上肢の麻痺が重度の場合には「重複片麻痺」と呼ばれる.
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