講座
小児麻痺の疫学と治療
堤 直温
1,2
1日本肢体不自由児協会
2駒形病院
pp.16-22
発行日 1955年8月10日
Published Date 1955/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200997
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本論に入るに先だつて一言断つておきたいことは,小児麻痺には脊髄性小児麻痺と脳性小児麻痺があるが,本論文は,脊髄性小児麻痺だけについてであるという点である。脊髄性小児麻痺と脳性小児麻痺は小児麻痺という名こそついているが,原因,症状,治療等全く異る疾患である.それは丁度カタルという名がついていても,胃カタルと,肺炎カタルが全く異る疾患であるのと同様である.胃カタルと肺炎カタルを混同するものは恐らく一人もいないだろうが,どういうものか脊髄性小児麻痺と脳性小児麻痺を混同する人が案外多い.
脳性小児麻痺は先天性又は脳炎,脳膜炎の後に来る疾患で,主な症状は四肢の痙攣性麻痺である.脊髄性小児麻痺は伝染病で,主な症状は四肢の弛緩性麻痺である.この疾患は1840年にハイネがはじめて急性脊髄炎という独立した疾患として報告し,その後1887年及び1895年にスエーデンのメディンが詳細に報告したのでハイネ・メディン氏病ともいう.アメリカでは法定伝染病になつているが,我国では届出伝染病として取り扱われ,医師がこの病気を診断したときには24時間以内に届け出なければならない。脊髄性小児麻痺は本当の病名ではなく,届出伝染病としては急性灰白髄炎という病名を用いている.アメリカではポリオマイエリティス(Poliomyelitis)を略してポリオと呼んでいる.
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