特集 進めよう! COPD対策
在宅酸素療法を受けている慢性呼吸器病患者の災害脆弱性と対応策
藤本 圭作
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1信州大学医学部保健学科 検査技術科学専攻 生体情報検査学領域
pp.855-859
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208323
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慢性呼吸器疾患患者の災害時脆弱性
先の東日本大震災においては,在宅酸素療法(home oxygen therapy;HOT)を受けている患者が,酸素機器が破損や停電で使用できず,多くのHOT患者(HOT難民)が医療機関に酸素を求めて殺到しパニックになったことは記憶に新しい1).また,慢性疾患患者の薬が供給できず悪化を来した例も多い.当時,HOT患者の酸素供給が断たれることの重大性について社会的な認識はなく,患者会の訴えによりようやく認識されることとなった2).また,震災による津波,震災直後の劣悪な居住環境,大気汚染,薬の供給停止は肺炎の発症,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)および喘息の増悪につながった3〜5).さらに日常生活動作(activities of daily living;ADL)の減少や低栄養も肺炎の増加に拍車をかけた6).後方連携の病院に搬送された患者の約3分の1が呼吸器疾患であったと言われている.このように災害時には慢性呼吸器疾患,特に全国に推計17万人いるとされるHOT患者の災害時脆弱性が明らかとなった.われわれは東日本大震災の教訓を生かして災害時対策を徹底する必要がある.
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