Topics Respiration & Circulation
慢性呼吸不全に対する在宅・長期酸素療法
近藤 哲理
1
1東海大学医学部呼吸器内科
pp.1255-1256
発行日 1998年12月15日
Published Date 1998/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910107
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最近の動向 長期酸素療法が慢性呼吸不全患著の運動能力と予後を改善することは,既に確立した観がある(Tarpy SP & Celli BR:N Engl J Med 333:710-714,1995).しかし,長期酸素療法が患者の何に作用するのかは依然として不明である.運動能力の改善は必ずしも呼吸困難とは関係せず,予後改善で重要な要素と考えられている肺循環系への効果についても不明な点が多い.肺循環系と長期酸素投与の関係は,数十人単位の被験者に対する研究がいくつか報告されているが,まだ,結論を得るには被験者数が少ない印象を受ける.一方,長期酸素療法の普及を反映して,最近は酸素投与器具や酸素供給装置に関する検討もしばしば行われている.米国では,長距離旅行は航空機が一般的な交通手段であるが,気圧の低下する機内で患者が酸素吸入を行う場合の血液ガスの変化についての研究も多い.さらに,長期酸素投与患者の日常生活の質についての研究や,患者の心理的変化,患者教育などを対象とした論文も多く認められる.すなわち,在宅酸素療法・長期酸素療法の研究は生理メカニズムを追究した基礎的方面と,実施における問題点を検討した実用的方面の二極化が認められる.なかでも,実用的な研究については,その国の社会状況(健康保険制度,住宅構造,入浴習慣,交通手段,対人関係など)によって影響を受けるために,論文内容を我が国の患者に当てはめるには慎重さを要すると思われる.
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