特集 公衆栄養への期待
健康長寿を支えるための公衆栄養の科学と実践
佐々木 敏
1
1東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野
pp.510-516
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208232
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食事改善は国民の健康を支えるための極めて重要な方策と見なされ,科学され,実践されてきた.20世紀半ばまでは栄養不足を中心とする時代であり感染症の時代であった.それが,20世紀後半に非感染性疾患(生活習慣病)の時代となり,わが国では深刻な食料不足がほぼ解決(または軽減)したこともあり,栄養問題は解決したかに見える.同時に,食品へのアクセスが向上し,栄養問題は「公衆」から「個」の時代に入ったようにも見える.
しかし,これはごく一面からの偏った見方に過ぎない.生活習慣病は,(1)完治が期待できる治療法がほとんど存在しない疾患であり,(2)長年月のなかで徐々に進行する疾患であり,(3)その原因と考えられる栄養素は特殊なものではなく,ほぼ国民全員がほぼ毎日,一生にわたって摂取(=曝露)しているものである,そして,(4)特定の生活習慣病の原因と考えられる栄養素や食習慣のその疾患への影響力は比較的に小さい.
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