Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
尾崎咢堂の『私の長寿と健康』―病弱なるがゆえの長寿
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.476
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101515
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「憲政の神様」と呼ばれ,戦前のわが国を代表する政治家の一人であった尾崎咢堂(1858~1954)の『私の長寿と健康』(『尾崎咢堂全集第9巻』,公論社)は,96歳の長寿を誇った咢堂が晩年に自らの健康の秘訣を語った随筆であるが,この随筆は「私は生来病身であった」という一文で始まる.咢堂は意外にも,「小さい時から頭ががんがん痛み,皮膚にはヒキガエルのようにぶつぶつができていて醜く,胃は弱くて少し変ったものを食べるとすぐ吐く」ような子どもだったのである.
このうち,皮膚病は10歳ぐらいの時に父母に連れられて草津温泉に行って治ったが,頭痛や胃弱は治らなかった.咢堂は幼いころから「この子はとても育つまい」と言われて育ち,母親は彼を育てるのに大変な苦労をしたという.咢堂はいつも病人として扱われ,工学寮に入った時も半年余り病院で暮らした挙げ句,ほとんど授業らしい授業も受けないまま1年足らずで退学してしまった.
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