- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
緒言
厚生労働省が平成20年に発表した「平成20年簡易生命表」によると,0歳時の平均余命である平均寿命は,男性で79.29年,女性で86.05年である.昭和22年の同様の調査では,男性の平均寿命は50.06年,女性の平均寿命は53.96年であったので,その差は歴然である.また,平均寿命が調査されている諸外国と比較すると,女性ではわが国が第1位となっており,男性においてはアイスランドが第1位で79.6年(2008年)であり,日本は次いで第2位となっている.このように,近年,わが国の平均寿命は急速に延び,世界有数の長寿国となった.
一方,近年の食生活の欧米化や産業のオートメーション化による不活動により,糖尿病,高血圧,肥満,脂質異常症といった生活習慣病の患者数が急速に増加している.このような現象は生活の質(QOL)の低下のみならず,医療費を高騰させるなどの経済に好ましくない影響を及ぼす一因ともなっている.したがって,わが国の対策として,ただ単に長寿を目指すのではなく,自立した“健康長寿”を獲得することが重要であると考えられる.生活習慣病は平成8年に厚生省(当時)が提唱した概念で,それまで「成人病」対策として2次予防(早期発見・早期治療)に重点を置いていたのを改め,生活習慣の改善を目指す1次予防(健康増進・発病予防)対策を推進するために,新たに導入されたものである.食事療法や運動療法は,生活習慣病の発症・進行を抑制するばかりでなく,薬物療法に比べ,やり方によっては非常に安価な治療法と言える.しかしながら生活習慣病は,生活習慣要因の乱れのみでなく,遺伝的要因,すなわち遺伝子多型がその発症や進行に関与しているので,例えば食事療法や運動療法によって生じる生活習慣病改善の程度に個体差が生じる.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.