衛生公衆衛生学史こぼれ話
25.タイフォイド・メアリー
北 正博
1,2
1東京都環境科学研究所
2東京医科歯科大学
pp.278
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207247
- 有料閲覧
- 文献概要
無名の一アメリカ女性メアリー・マロン(Mary Mallon)はチフス菌の永続排菌者であったがため,タイフォイド・メアリー(Typhoide Marry)と仇名され,一躍有名人となつた.
彼女は1901年,腸チフスに罹患,雇われ先でコックをしていたが,1ヵ月後にこの家の洗濯女が腸チフスにかかった.1902年,彼女は別の家に移ったが,2週間後に洗濯女が腸チフスにかかり,1週間後にこの一家から7名の患者が出た,1904年,彼女はロング・アイランドの某家(家族4人,使用人7人)に移ったが,3週間のうちに4人の使用人が罹患した.1906年,他の家に移ったが,11人世帯中6人が8月27日〜9月3日の間に罹患して,この時初めて,メアリーに排菌者の嫌疑がかけられた.9月21日,別の家に移り,10月5日に洗濯女が発病した.1907年ニューヨーク市の某家に移ったが,2名の患者が出てうち1名は死亡した.この5年間にメアリーは腸チフス26件の原因であることが知られている.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.