特集 休養の科学
休養と生活—喫煙の心理
坪井 栄孝
1,2
Eitaka TSUBOI
1,2
1福島県医師会
2慈山会医学研究所付属坪井病院
pp.328-331
発行日 1987年5月15日
Published Date 1987/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207469
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■はじめに
今日までのたばこの文化を論じながら,人間の情操にかかわる部分でのみたばこが,人間生活の中での休養と接点をもっているというのであれば,それなりに妥協も見いだせるかもしれないが,「休養の科学」,とくに健康づくりの場においては,喫煙は休養どころか健康阻害因子であり,非喫煙者にとっては,むしろストレス因子である.喫煙をストレス解消の手段として評価する論理は,あくまでもニコチン依存症という範疇でのはなしであって,喫煙しないものには全く通用し得ない,いたって局限的な評価である.また,一方には喫煙が過剰な食欲をおさえることによって肥満を予防することができるから,喫煙は科学的にも健康づくりに効果を上げているという意見もある8).
たしかに喫煙が食欲中枢に抑止的に働きかける薬理作用も否定できないが,同時にひきおこされている数多くの健康阻害を無視するわけにはいかない.健康づくりのための肥満予防手段としては,むしろ幼児期からの食生活習慣の学習が肝要なのであって,現在のように幼児期から脂肪が主役であるような食習慣を身につけさせておいたのでは,大人になってから脂肪を少なくしろといっても,そのような学習を受けていない身体にどういうふうにしていいか見当がつかない状態にある.
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