調査報告
英国における循環器疾患予防のための栄養摂取に関する指針の変遷—1974年と1984年の指針の比較検討
鏡森 定信
1
,
中川 秀昭
2
Sadanobu KAGAMIMORI
1
,
Hideaki NAKAGAWA
2
1富山医科薬科大学保健医学教室
2金沢医科大学公衆衛生学教室
pp.773-779
発行日 1985年11月15日
Published Date 1985/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207151
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●はじめに
成人病は生物学的には加齢現象の結果であるが,それが発症する過程においては,長期にわたる各人の生活習慣(環境要因)が大きく影響する疾患でもある.成人期の主な循環器疾患である脳血管疾患や虚血性心疾患についても,このことは例外でない.例えば,Forsdahl1)は青年期の生活状況がその後の成人期の虚血性心疾患の発症に強く関連することから,危険因子については過去にさかのぼって論ずる必要のあることを強調している.わが国においても肥満や食塩の過剰摂取の規制を小児期や青年期から行うことにより,成人期の循環器疾患を予防しようという気運が最近高まってきている.
英国では,すでに1974年に虚血性心疾患の予防を目的に,小児から成人に至る健常者を対象とした栄養に関する指針が発行され,すでに10年を経過している.この度,その後の循環器疾患と栄養に関する研究の成果をふまえた指針が新たに発行された.英国の成人期の主要な循環器疾患死亡は虚血性心疾患であり,一方わが国のそれは脳血管疾患であるため,英国の栄養指針をそのままわが国に当てはめることはできないが,この編者らは脳血管疾患や末梢血管障害も念頭においてそれを作成したといっているので,その内容は今後のわが国の循環器疾患予防の活動にとっても有益なものと考えられる.また10年の間隔をおいて発行された栄養指針の内容を比較検討することは,今後のわが国の栄養指導を展望するに際しても資するところが少なくないものと思われる.
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