特集 死と公衆衛生
地域のなかで死を看とる—8年間の歩みを通じて
鈴木 荘一
1
Syoichi SUZUKI
1
1鈴木内科医院
pp.526-532
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207093
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■はじめに
第二次大戦の連日空襲下という熾烈な環境の中で民俗学者柳田國男は,日本人の本来いだいていた「死」の問題を,「先祖の話」として書き上げた.その中で彼は,「死の親しさ」の項1)で,次のように述べている.
「どうして東洋人は死を怖れないかということを,西洋人が不審にし始めたのも新しいことではないけれども,この問題にはまだ答えらしいものが出ていない.怖れぬなどということはあろう筈がないが,その怖れにはいろいろの構成分子があって,種族と文化とによってその組合せが一様でなかったものと思われる.生と死とが絶対の隔絶であることに変わりはなくとも,これには距離と親しさという二つの点が,まだ勘定の中に入っていなかったようで,少なくともこの方面の不安だけは,ほぼ完全に克服し得た時代が我々にはあったのである」.
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