特集 地域における精神保健
米国における地域精神保健—都市スラムの拡大
西山 正徳
1
Masanori NISHIYAMA
1
1厚生省保健医療局精神保健課
pp.313-318
発行日 1985年5月15日
Published Date 1985/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207047
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■都市スラムの実態
近年米国では,ニューヨークやロスアンジェルスなどの大都市における浮浪者(Skid-Row Homeless)の増加が一つの社会問題とされてきており,彼らを収容すべく緊急保護施設などのシェルターの不足が言われている.ほぼ35万人に近い浮浪者が,ダウンタウンの地域福祉センター周辺にダンボールで作った「仮のすまい」を作り,日々の食料にも事欠く有様を呈している.また,最近APA(アメリカ精神医学連盟)を中心として,これら浮浪者の中に,かなり多くの精神障害者やアルコール中毒者がおり,適切な精神医療が提供されていない旨の研究報告と勧告書が出されている.この報告書によると,住居がなく重症の精神障害者の浮浪者が全体に占める割合は25〜50%いるとしている.この数字は全米各都市で恐らく異なっていることと,調査対象範囲,及び方法の困難性が伴うため,客観的信憑性については疑問の余地を残しているものの,筆者の体験からしてだいたい妥当な数字であると考えられる.この調査を担当したRichard Lamb博士は,緊急に必要なことは住居と衣服と食料であり,特に精神障害者に対してはハーフウェイ・ハウス,グループ・ホーム,ボード&ケア・ホームが必要であるとしている.また近隣に危機介入や部分入院を可能とする病院なりシステムが欠如しているため,医療へのAccessibilityが極めて低いことも挙げている.
一方,ロスアンジェルスのダウンタウンを中心に精神衛生調査を行った,
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