特集 身の回わりの衛生
第I部 生活と環境
スラムと団地=都市住生活と健康
東田 敏夫
1
1関西医大・公衆衛生学
pp.16-22
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203555
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はじめに—問題の所在
近年における産業化の進行,とくに「高度経済成長」の進展は,京浜,阪神,東海,北九州などの太平洋重化学工業ベルト地帯における企業と人口の集中をますます増強し,都市圏は無秩序に拡大し,過大都市の病理現象はその度を加えている.「これまでのわが国の都市化,工業化の進展過程における最大の問題は,無計画,無秩序な都市発展と人口膨張によって,道路,住宅,上下水道の諸機能,諸施設の整備がたちおくれていること,および産業の発展に重点がおかれ,それが住民の生活に対しておよぼす影響について,十分考慮がはらわれてなかったことである.」1964年8月,神田厚生大臣が,当面の「厚生行政における課題」として「過大都市の問題」の重大性を閣議において報告するにいたっている.
東京,大阪その他の過大都市の病理現象については,すでに周知の事実であるが,ここでまず,市民自身は,これらの大都市における生活環境,あるいはこれにつながる都市行政にたいして,どのような考えや要望をもっているかをたずねると,東京都民のばあいは,「都政に特に力を入れてほしいこと」として(今の資料1)より算出),第1に住宅対策(要望率50%)をあげ,ついで道路整備(38%),交通対策(32%),下水道(32%),清掃(19%),児童遊園地(23%),公園(10%)などを答えている.
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