特別寄稿
スラムの天使。ケニア人助産婦フリーダの話
早川 千晶
pp.583-588
発行日 2002年7月25日
Published Date 2002/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902912
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東アフリ力最大のスラム,キベラ
東アフリカ,ケニア共和国の首都ナイロビ。近代的な高層ビルが建ち並ぶ,人口219万人の大都会だ。そんなナイロビの片隅に,キベラというスラムがある。ここは幅1.5km,長さ4.5kmほどの細長い地域に無数のトタン屋根の家並がひしめく不法居住区である。たったこれだけの狭範囲に,なんと80万人もの人々が暮らしているというから,その人口過密ぶりは想像を絶する。
キベラ・スラムの住民たちの多くは,農村から現金収入の道を求めて出稼ぎに来た人々とその家族だ。農耕に適した土地が全国土の7%にも満たない半乾燥地のケニアでは,近年の爆発的な人口増加や干ばつなども影響して,昔ながらの自給自足型の農業を営みながら生き抜いていくことが多くの農家にとって困難になっている。医療や教育を受けるためにも現金が必要である。しかし,職の機会を求めて都市に出てきても,街には失業者が溢れている。大卒者でさえ定職を得ることが大変難しい社会状況の中で,あまりの生活苦から初等教育すら修了することができなかった数多くの出稼ぎ組には,まともな就職口を得られるチャンスは少ない。それでも,出稼ぎ者の肩には,農村で仕送りを待ちわびる数多くの家族たちの生活がかかっている。幸運にも日雇い仕事が得られたとしても,1日の稼ぎは100円程度にしかならない。生活環境が極端に劣悪なスラムで,出稼ぎ者たちは食うや食わずの生活を送りながらも,農村で待つ家族に必死で仕送りを続けるのだ。
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