連載 世界のフィールドから 健康づくりはボーダレス・2
スラムの住まいと健康—カンボジア
加藤 麻由美
1
1東京大学医学部国際地域保健学教室
pp.436-439
発行日 1999年5月10日
Published Date 1999/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901984
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私とカンボジア
私が初めてカンボジアを訪れたのは1994年2月の事です。ちょうど前年にUNTACによる選挙が行われ,20数年の戦乱からの復興の歩みを始めたところでした。そのころは空港も整備される前で,預けた荷物も自分で飛行機から直接積みおろされるところまで取りに行き,その後ばたばたと査証手続きをして入国という感じでした。いまはすっかり空港も整備されて,昔の面影はうかがえません。私は日本の高度成長期に生まれ育ちました。今でもきれいになったプノンペンの空港に降り立つ時は,昔を知らないで現状をあたり前と捉えてしまう事の怖さを感じる瞬間です。
私がじかにカンボジアの人々に関わったのは,この94年から97年の3年半,ちょうどタイ・バンコクに赴任した時のことで,私の見聞は他のさまざまな援助機関で長く活動された方々に比べれば,ほんのわずかな期間です。しかし不安定な政治経済状況の中では何しろめまぐるしくいろんなことが起こったので,スラム住民の歩みに寄り添った私の3年半のプロセスは,それまで生きて来た年齢以上の重みと学びを与えてくれました。
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