特集 栄養疫学
栄養状態と脳卒中に関する栄養疫学—新潟県新発田市における実践例
田中 平三
1
,
伊達 ちぐさ
1
Heizo TANAKA
1
,
Chigusa DATE
1
1大阪市立大学医学部公衆衛生学教室
pp.94-101
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206993
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■栄養疫学
疫学の原理と方法1)に基づいて,栄養状態とある疾病(健康)との因果関係を追究する学問が栄養疫学である.人間の栄養状態を示す変数をX,ある疾病をYとする.栄養疫学の第1段階(現象論)では,主として生態学的研究によって栄養学的要因Xと疾病Yとの因果に関する仮説が設定される.いくつかの集団を対象にして,Yの有病率とXとを同時に測定して,両者間の関連性を検討する.第2段階(実体論)では,設定された仮説を検定する.患者・対照研究により,疾病Yの患者群と疾病Yでない対照群とにおけるXに暴露された者の割合を測定する.コホート研究では,疾病Yの非罹患者をX暴露群と非暴露群とにわけ,一定期間追跡し,両群におけるYの発生率を比較する.第3段階(本質論)の介入研究(実験栄養疫学)では,X暴露群を無作為にX除去群と非除去群とにわけ,一定期間追跡し,両群におけるYの発生率を比較する.Xの非暴露群を無作為にX適用群と非適用群とにわけることもあるが,XがYのリスクを高めることが推理されている場合には,これを実施してはならない.このようにして,栄養学的要因Xと疾病Yとの間に因果関係があると決定されると,他の発生要因との相互関係が検討され,疾病Yの発生機序が解明されていく.
地域における公衆栄養活動は,(1)集団における栄養に関する問題点の発見と決定,(2)公衆栄養活動の目標,方策の樹立,(3)公衆栄養活動の実施,(4)評価の4ステップを順序どおりに踏襲して実践されている2).
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