講座
公衆衛生における細胞遺伝学研究(その3)—変異原・がん原性物質への曝露と染色体の変化
森本 兼曩
1
,
小泉 明
1
Kanehisa MORIMOTO
1
,
Akira KOIZUMI
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.434-445
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206880
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■はじめに
前号では,染色体DNAに生じた傷害の鋭敏な指標として,最近注目されている姉妹染色分体交換(Sister Chromatid Exchange;SCE)について,その形成の機構と検出法を述べると共に,SCE及び染色体異常の形成に関する我々の研究成果を,公衆衛生学的な展開の立場から概述した.本号では,近年とみに注目されている癌化の機構と染色体変異の関係について,最近の知見を紹介すると共に,我々の環境中に多数存在するであろう変異原・がん原性物質の有効な短期検索法としての染色体検査法を紹介する.また,現在既に健康管理の立場からも注目されている,有害環境因子に曝露した人間集団に観察される染色体の変化を,発がん・遺伝的負荷のリスク評価の立場から紹介すると共に,将来的にこのような集団への細胞遺伝学的なアプローチを大きく進展させる為に必要な染色体の自動分析装置の開発の現状について述べ,最後に公衆衛生学的な側面から多大の期待が寄せられている各個人或いは,集団レベルでの"健康度"―疾病予測の方法論としての染色体研究について論を求める事とする.
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