講座
公衆衛生における細胞遺伝学研究(その2)—姉妹染色分体交換(SCE)と環境科学
森本 兼曩
1
,
小泉 明
1
Kanehisa MORIMOTO
1
,
Akira KOIZUMI
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.359-370
発行日 1984年5月15日
Published Date 1984/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206866
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■はじめに
前回は主として染色体の異常のうち,その構造異常或いは数的異常についてヒトの健康状況との係わりを述べた.これら染色体の構造異常・数的異常はすでに約半世紀の研究の歴史を持っているが,近年新しい染色体変異として姉妹染色分体交換(SCE)現象が注目されてきた.このSCE現象は,まず1938年にマクリントックがmaze(とうもろこし)の細胞におけるring(環状染色体)の形態変化から,その存在を予測していたものである.具体的に細胞遺伝学的な手法において,最初にこのSCEの現象を観察したのはTaylorであった,しかし,このTaylorのSCEの観察以来10年以上もの間,この現象は殆ど研究上顧みられる事がなかったと言ってよい.ところが,1972年Egolinaらにより最初に,より簡便な手法でSCEが観察される事が報告された.この方法はLatt或いはPerry,Wolffら1,2)により改良を加えられ,ここ10年の間に世界中の主要な細胞遺伝学研究の実験室に重要な研究課題として広まっていった.
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