特集 ウイルス感染症
遅発性ウイルス感染症
甲野 禮作
1
Reisaku KOHNO
1
1埼玉医科大学細菌学教室
pp.232-235
発行日 1983年4月15日
Published Date 1983/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206678
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■遅発性ウイルス感染(症)とか何か
そもそも遅発性ウイルス感染(症)はアイスランドの獣医学者ビヨルン・サイガードソン(Bjorn Sigurdsson)が1954年に提唱したもので,彼は次の5条件を満たす感染をそのようにいったのである.
(1)数ヵ月から数年に及ぶ長い潜伏期の後に,(2)徐々に発病し,(3)規則正しい遷延性進行性の経過をとり,(4)予後の悪い病気で,(5)その感染は単一種の宿主に限られ,しかも一種の組織または器官に限られて起こるというものであった.今日でもこの定義はおおむね妥当であるが,(5)の条件は普通除かれている.遅発性感染というとき,潜伏期の異常な長さに重点がおかれているのがユニークな点である.サイガードソンはアイスランドにあるヒツジの病気Visna-Maediの研究中,これらの病気は従来の感染症と異なり,遅発性感染という新しいカテゴリーに属するものだとした.
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