Current Research
産婦人科領域における遅発性ウイルス感染症—B型肝炎ウイルスからC型肝炎ウイルスヘー
稲葉 憲之
1
Noriyuki Inaba
1
1千葉大学医学部産科婦人科学教室
pp.773-779
発行日 1993年6月10日
Published Date 1993/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901351
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)は一種の遅発性ウイルス感染症(slowvirus infection:SVI)1)を引き起こし,感染後長いキャリア時代を経て肝癌を発症せしめることが知られている。それぞれのウイルスキャリアの79歳までの肝癌発症率(whole life cumulative risk:WCR)はHBVが16.7%,HCVが23.4%に達し(表1),喫煙者の肺癌発症率(20〜73歳)4.6%に比して有意に高いことが知られている。また,両ウイルス共男性においてそのWCRが有意に高率であるが,女性キャリアは妊娠,分娩,育児などを通じて次世代ヘウイルスのみならずSVI疾患を伝播させる可能性があり,産婦人科においては重要な疾患の一つである。当科では1975年よりHBVの,また1989年よりHCVの疫学的調査,母児感染・夫婦間感染調査などを実施してきた。HBV以下,母児感染予防における当科の新生児早期ワクチン接種・HB immunoglobulin(HBIG)1回投与法の成績および当科におけるHCVの母子感染成績に焦点を絞り,紹介したい。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.