特集 環境汚染への対応
「京浜喘息」への対応
助川 信彦
1
1横浜市公害対策局
pp.580-587
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205069
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「京浜喘息」本態追究の歩み
昭和50年5月15日朝の朝日新聞によれば,「京浜喘息北上?」と題して,埼玉県高教組の研究グループが小児喘息の県内発生分布を調べたところ,県南地区にその発生率が高いことから,因果関係については明らかではないけれども,最近における公害現象の広域化に伴って京浜地区の大気汚染が北上してきてこのように発生率が増えているのではあるまいか——という見方もあるとのことである.
そのような見解の当否は別問題として,「京浜喘息」あるいは「ヨコハマ喘息」の呼び名の源流をさかのぼってみると,約30年以前に辿り着く.昭和21年,米国の軍医が横浜に進駐したアメリカ軍人とその家族に,喘息様疾患が高率に発生したことを報告した.このことは,すでに専門家には周知のことであるが,Phelps H. W. らは,「大気の汚染や喫煙が人の気管支に持続的刺戟をあたえてヨコハマ喘息をひき起す.とくに,アレルギー体質をもつ者の場合は,少くとも,そうした刺戟が引き金となって気管支喘息の症状を悪化させる.ヨコハマ喘息は,慢性気管支炎や気管支喘息で始まりやがて肺気腫に進む」と述べた.Spotnizは「ヨコハマ喘息を起すスモッグは太平洋の黒潮暖流が関東地方の気流に影響を及ぼし,冬季にはこの地方を被う気温逆転層が煤煙の拡散を妨げ,濃いスモッグが丘陵部や山間によどむ状態をつくる」と報告した.
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