特集 環境汚染への対応
地域保健としての環境汚染への対応
大平 昌彦
1
1岡山大学医学部衛生学教室
pp.573-579
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205068
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
昭和30年代以降のわが国の高度経済成長に伴って,環境汚染は職場(生産と労働の場)から地域(消費と生活の場)へと急激に拡大してきた.重化学工業を中心とする生産施設の巨大化・集中化,太平洋沿岸ベルト地帯での人口の過密化,大量生産と大量消費との定着などに代表される環境汚染要因の質的ならびに量的拡大によって,「産業公害」,「都市公害」,「交通公害」,「食品公害」,「薬品公害」などと称される各種公害が発生してきたが,この事態に対応すべき汚染防止対策の著しい立遅れは公害発生に一層拍車をかけた.その結果,多数の労働者,地域住民の健康被害が全国的規模で,顕在的,潜在的に発生するという今日の事態を招き,このような深刻な状況は,environmental disruptionと表現される近年の世界的な環境汚染の中でも極めて特異的であり,「KOGAI=公害」と表現する以外にない特殊日本的特徴1,2,3)を有するものであることが,政治,経済学的分析によって指摘されてきた.
数年来「公害」という社会的に定着しつつあるこの言葉に対して,「環境汚染」というむしろ自然科学的といえる表現が,主として「公害」発生源企業,行政および一部の学者らによって使われてきている.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.