特集 食品汚染
食品汚染に対する消費者保護行政—食品衛生監視政策の問題点など
宗像 文彦
1
1国民生活センター
pp.383-388
発行日 1975年6月15日
Published Date 1975/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205023
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消費者保護施策の進展
最近,消費者保護の立場から食品衛生対策の充実強化を望む声が大きくなっているが,元来,食品衛生とは,食品衛生法第1条にいうとおり,「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し,公衆衛生の向上および増進に寄与すること」であり,食品を購入し喫食する一般国民,すなわち消費者を直接に危害から保護する対策なのであるから,消費者問題がクローズアップされる以前から行なわれてきた消費者保護施策の重要な一環であり,その強化充実は当然といえば当然なことであろう.
一般国民が自ら「消費者」という意識をつよめ,その立場から問題提起を行なうようになったのは,最近10数年来の著るしい傾向であろう.戦後の4分の1世紀において,技術革新とともに大量生産,大量販売の体制が確立され,食品を含む種々の商品が,生産者により一方的にしかも次次と新製品として大量に提供され,消費者はその商品の品質,安全性,価格の適否等を考慮する余裕もなくそれを購入し,消費してきたのである.しかしその間にあって,ウソツキ商品や粗悪品や不当価格の問題等が次第に消費者の苦情・不満となってあらわれてきた.とくに,食品汚染による危害の発生は,この消費者の被害意識を顕在化させた.
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