研究
疾病観に関する研究
松井 清夫
1
,
坂本 弘
1
,
杉浦 静子
2
1三重県立大学医学部衛生学教室
2三重県立高等看護学院保健助産学科
pp.218-222
発行日 1968年5月15日
Published Date 1968/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203676
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はじめに
公衆衛生的なコミュニティ・アプローチの初段階では,地区調査すなわち,地域の保健衛生上解決されなければならない客観的な問題点をあきらかにすることが必要であることは論をまたない。しかし一方,対策化を考えるための地区診断の段階においては,地区住民保健行動体系のなかへの問題点のとり込みの状況や程度を知る必要が正じてくる。この場合,住民の保健行動は,保健態度という行動の準備体制のうえになりたち,態度は心理的欲求に支えられたものとの解釈にのっとって調査分析が進められる1)。この作業の流れがニーズの把握といわれているが,ニーズの解釈は必ずしも諸家の見解が一致していない。ヘルス・ニーズといわれているものに心理学的意味での欲求―すなわち「健康でありたい」というものと,WHOなどで使われているような保健衛生上解決しなければならない「必要性」との二つの概念があり,これに対し田中は,コミュニティアプローチの立場からは必要性と欲求を基底としてあらわれた住民保健行動のずれをヘルス・ニーズとして把握すべきことを述べている1)。これに関し,岡田ら2)はニーズを縦の系列で国レベル,地域レベル,個人レベルに分類し,前二者は要請,要求,必要の意味を強くもち,個人レベルでは欲求と同一義に用いられるとしている。
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