Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
パスカルの『病の善用を神に求める祈り』―宗教的な疾病観
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.289
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108624
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1659年,パスカルが36歳の時に書いた『病の善用を神に求める祈り』(前田陽一訳,中央公論社)には,当時重病に冒されていたこの不世出の天才の一種独特の疾病観が描かれている.
この小品でまずパスカルが示すのは,病気の原因に対する宗教的な考え方である.パスカルは,「あなたは今わたしを矯正するために,病気をおつかわしになりました」,「わたしはわたしの健康を悪用しました.そして,あなたは正当にもわたしを罰せられました」と,自分の病気を,神から下された罰だと考える.パスカルにとって,「肉体の病気は魂の病気の刑罰と表徴を兼ねたもの」にほかならず,「あなたはあなたに仕えさせようとして,わたしに健康をお与えになりましたが,わたしはそれを全く世俗的に用いました」と,病気はこれまでの自分の誤った生き方に対する報いであるという,因果応報・心身相関的な考え方を示すのである.
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