特集 公衆衛生の基本法をめぐって
主題
公衆衛生の将来像
公衆衛生の行くてを阻むものとその改善—識者へのアンケートを中心として
松浦 利次
1
1東京都中野北保健所
pp.21-29
発行日 1967年1月15日
Published Date 1967/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203398
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はじめに
われわれの携わっている公衆衛生のもろもろの問題は,新憲法が制定されてからだんだん向上して,その活動は,学界においても,行政においても,また民間の諸団体においても,すばらしい形で展開せられ,国民の健康に大きく寄与しつつあることは,誰しもこれを認めるにやぶさかでないであろう。
これは,われわれ公衆衛生人だけの誇りではなく,すべての国民の誇りであり,比較的若いこの分野を,さらに正しくたくましく成長させ,より大きく稔らせるよう,もしその育成を妨げる雑草があるならそれを除き,養素や扱いの点に欠けるものがあるなら,よりよく肥培管理するという,その努力を惜しんではならない。にもかかわらず,一部でどこかに,公衆衛生が"たそがれ"を迎えつつあるのではないかという,悪魔のささやきにも似たつぶやきがあり,かと思うと一部には,いやそれは“あけぼの”のうす暗さにすぎないという,善意と希望の反論もきかれる。わが国の公衆衛生は,そんなにも弱々しく,“わかめ”の状態のまま,ひよわな草花のように成長をとどめる存在であろうか。われわれの期待は決してそうではない。それは亭々とそびえて,わが国民の健康と福祉とを約束し,ひいては四囲の国々にもその恵沢に浴すことができる,大樹の素質をもつと信じている。世界のあちこちで,花ひらき実を結びつつある同じ樹木が,わが国では地味わるく,育ち難いなどとは考えたくない。
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