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精神病者の自立を阻むもの
深山 ゆり
1
1奈良県の精神医療をよくする会・わかくさ会
pp.210-211
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205589
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天女のように思えた保健婦からの電話
私は,精神分裂症と診断されて精神病院に入院した辛い体験を持つ子の母親である。
ある県の家族会の勉強会に参加した時,私は,回復者Aさんの体験談をしみじみと聞いた。彼は大学在学中に発病し,いろいろの事情で入退院を繰返した人である。「……両親は,退院後の私に冷たく,食事も与えてくれない。私は大根を畑から引抜いて食べた。辛いものである。水がおいしかった。そのような孤独な私にかかってくる保健婦さんからの電話は,天女の声のように美しく温かく聞えた。」また,「社会や政治の問題を個人の問題として責められたら,個人としては解決できなくて,病気になるより仕方がない。精神病の原因は,決して素質とか性格の問題ではない。……社会復帰のために,住居・土地・職業・収入など,行政で保障してほしい。」最後に,「とにかく生きているということ,それ自身がすばらしい。」と。彼は現在特技を生かして美術の仕事に精出している。
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